学生アスリートの君へ

陸上100mからビジネスの世界へ。限界への挑戦 – 秋田雅俊

関西有数のスプリンターでしなやかな走りが特徴だった(左から2人目)

100mを極めようと追究した日々が、ビジネスにも活きている。

そう語るのは秋田雅俊。大手広告代理店に勤務するビジネスマンだ。彼が学生時代に熱中していたのが陸上競技の100m。陸上男子100mと言えば、陸上競技の数ある種目の中でも花形の種目だ。その100mを専門種目とし、全国インターハイ、全日本インカレと学生最高峰の大会に出場し、引退後はビジネスの世界でも高みを目指して挑戦をし続けている。そんな彼が今、学生アスリートに伝えたい思いとは。彼の競技人生と共に取材をさせていただいた。

Q.どんな陸上競技人生でしたか

陸上競技は中学3年から大学4年までの8年間続けました。 中学2年まではバスケ部でしたが、一応進学校ということもありチームは弱く、どれだけ努力しても勝てない日々。 自分の努力が成果に直結するという陸上の魅力に惹かれ、陸上部へ転部。 最初は競争相手が比較的少なそうなハードルを選びました。 ハードルという才能だけでなくテクニックも求められる競技を選んだことが幸いし、言葉の通り、努力すればするほどタイムが縮むという魅力にどっぷり浸かっていきました。 気づけば愛知県大会で上位入賞し、東海大会にも進出しました。 その後、もっとストイックに自分の限界に挑戦したいと考えるようになり、陸上界では花形と言われる100mへ競技変更。

100mは単純でありながら最も複雑な競技だと思っています。 たった10秒の間に何カ月も練習してきた成果をぶつけ、結果を残さなければいけません。 しかも、予選・準決・決勝と、ある程度の再現性も求められます。 0.01秒早く走るためには、ストライドをこうしてピッチをこうして、骨盤の動きを、、、筋トレメニューはこうで、、、とほぼ匠の技と言っても過言ではないかと。 そんな100mの魅力にも惹かれ、どっぷりハマりました。 毎日毎日朝から晩まで、仲間と一緒に「どうしたらあと一歩進めるか」「どうしたら後半の失速を抑えられるか」とひたすらディスカッション今思えば、何の報酬もないのにあそこまで熱く語り合えた環境は、本当に貴重な財産です

結果、高校時代の最高タイムは10秒78で全国インターハイ出場。大学時代は10秒58で全国インターカレッジ準決勝進出。 この経験は、今でもかけがえのない人生の宝物です。

同志社大学陸上部の仲間と合宿にて(右から2人目)

Q.社会人になってから陸上競技を通して学んだことがどのように活きていますか

大学4年で陸上引退後、大学院に進みました。 元々、勉強することは好きな性分。昨日まで知らなかったことを知る喜びはとても心地よかったです。 大学院では情報工学を学び、その後、大手広告代理店に就職しました。 広告業界は当時、ブラック業界と言われていましたが、体育会で鍛えた精神力(もちろん肉体力も!)がどこまで通用するか試したい気持ちが強かったです。 結果、想像を絶するほどに激しく働きました。

最初の数年は本当に大変。朝から晩まで頭をフル回転で駆使しても、追いつかないくらいでした。 陸上で例えると400mの全力疾走をひたすらこなす練習メニューが毎日、といった感じ。 何より辛いのは陸上と違い、明確なゴールがはっきりしない部分です。 陸上の場合、何か月後のあの大会にピークを持っていくため、この時期に追い込み、この時期に調整と計画を立てられます。 仕事にもよりますが、私の場合、明確なゴールはなく、強いて言うなら毎日が全国大会のような感覚でした。

そんなこともあり、学生時代との感覚のギャップを埋めるのに時間はかかりましたが、人間は不思議なことに、与えられた環境に適応していきます。 数年もすると、同じ業務は半分以下の時間でこなし、さらに上流の仕事を自分から取りに行ける余裕が出来てきました。 そうなると毎日が楽しくて仕方がなくなります。なぜなら、毎日、全国大会を満喫できるのだから。 毎日全力疾走で業務をこなす感覚は、陸上ととても近い感覚で中毒性が高いです。 それが学生自体の良き思い出を想起させて、またやる気に満ちてという好循環。 こうして、今の自分が築かれていったように思います。

就職して10年。もはや陸上期間(8年)より長くなっていることに驚きを隠せません。 大人になってからの時の流れは早いと言いますが、本当に早かったです。 10年目になって、これからの目標を考えると・・・・とにかく全てを極めていきたいと思っています。 最初の5年でメディア業を極め、その後、デジタルマーケティング業を極め、今は新しい領域にチャレンジしています新たな仕事を与えられたら、とにかく誰よりも努力して誰よりも物知りとなり、誰にも発想できないアイデアを率先して作っていく、そんな心構えで仕事をしています

プロフェッショナル気色になったのは完全に陸上経験のおかげです。 陸上を極めたいと思った学生の頃のように、今はビジネスを極めたいと思っています。

陸上競技で培った追究する力はビジネスでも確実に活きている

Q.学生アスリートへのメッセージをお願いします

学生の間に何に熱中するかは非常に大切です。 人生100年と言われる時代ですが、その人間を構成する主となる要素は学生時代に何をしてきたかだと思っています。 学生時代の経験が顔に現れ、動きに現れ、言葉や言動に反映されていきます。 ジャンルは問わず、とにかく夢中に取り組むことがとても重要です。 そんな中でも陸上は人を成長させることのできる競技だと考えています。 ある大会に向けた調整には、スケジュール能力が求められます。 目標タイムの設定と達成は、KPI策定とToBe‐AsIs分析が求められます。 毎日トレーニングを繰り返すことは、ルーチン作業の実践能力が求められます。 最新のバイオメカニクス理論を得る行動は、ヒアリング能力・人脈構築力・情報処理能力が求められます。 仲間と語り合う日々には、コミュニケーション力、自己表現力が求められます。 これらすべてが社会人に求められる能力です。

今でこそ私はそう思えるようになり、偉そうに述べましたが、学生の皆さんは今はそんなことは何も考えず、とにかく陸上に熱中することが大切です。 「どうすれば速く走れるのか」「どうすれば高く飛べるのか」「どうすれば遠くに飛べるのか」 「どうすれば能力を高めるために適した環境を作れるのか」 ひたすらに「どうすれば」を問い、仲間と熱く語り合うことが大切です。 その経験が、必ず将来役に立ちます。 学生時代の経験量が今後の人生を大きく左右します。 この記事を見ている学生は「陸上」という既に夢中になれるジャンルを見つけているはずなので、あとはとことん極めるのみです。 誰よりも学び、誰よりも考え、誰よりも多く実践する。 きっと明るい未来が待っていると思います。

 

秋田雅俊

大手広告代理店勤務

1986年4月14日愛知県生まれ。私立滝中学・高等学校、同志社大学、同志社大学大学院出身。中学2年生までバスケットボールに取り組み、3年時に陸上競技に転向しハードル競技に取り組む。高校では100mを中心に短距離種目に取り組み全国インターハイに100mと400mリレーで出場。大学では100mで10秒58まで記録を伸ばし、全日本インカレの準決勝進出。大学で競技を引退し、現在はビジネスマンとして充実した日々を送る。2児の父。

 

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