小学校5年生のとき、友達に誘われて陸上クラブへ。
クラブは駅伝が中心だったこともあり、最初は800mや駅伝を取り組んでいたという。
“1位になりたい”
小学校のリレーをきっかけに短距離に魅了され、中学では本格的に短距離を取り組み始めました。1年生の頃は県大会で決勝に進めるレベルでしたが、負けず嫌いな性格が“もっと上を目指したい”“1位になりたい”という強い気持ちを生み、練習に力を注ぎました。
冬の毎週末、河川敷で200mのインターバルを走る練習は、かなり辛かった記憶がありますが、試合の度に足が速くなっていることを実感でき、苦しさ以上に嬉しさが勝っていきました。その努力が形となり、中学2年生では関東大会出場、3年生では200mで全国4位という結果を残すことができました。
しかし、その“4位”は嬉しさよりも悔しさのほうが強く、“日本一になりたい”という想いを胸に、高校進学を決めました。
新島学園での挑戦と成長
2年生ながら400mでインターハイ優勝を果たした先輩の存在や、“日本一を目指そう”という顧問の先生の言葉に背中を押され、新島学園へ進学しました。
中学時代に一度経験していたことや、小学生の頃に800mに取り組んでいたこともあり、400mを本格的に始めることにしました。
1年生では、個人・リレー共にインターハイ出場を果たしましたが、マイルリレーの予選で接触による怪我を負い、決勝へいけず悔しい思いをしました。この悔しさを晴らすのは“来年のインターハイしかない”――とリベンジを誓いました。
ところが、冬季練習中に足を痛め、思うように練習ができない日々が続きました。シーズンに入っても痛みは引かず、不安を抱えながら過ごしていましたが、そんな時、父が見つけてくれた整骨院との出会いが大きな転機となり、再び走れるように。その結果、2年生のインターハイでは5位入賞を果たすことができました。
また、2年生のインターハイ後からは主将も任され、チームをまとめる責任を背負ったことで、競技面だけではなく人としても成長することができました。辛いことも多々ありましたが、顧問の先生がかけて下さる言葉が、いつも心の支えとなっていました。
高校3年、届かなかった頂点と、掴んだ誇り
高校3年生では、インターハイ優勝を目標に掲げていました。
しかし、同学年には、400m・400mハードル・800mで全国に名を轟かせていた石塚晴子選手がいました。彼女の存在は、私にとってとても大きく、高い壁でした。
結果は、インターハイで彼女に次いで2位。正直、悔しさはありましたが、それ以上に、「全力を尽くしての完敗だった」と胸を張れるレースでもありました。
そして、その悔しさを胸に挑んだ国体では、念願の全国優勝。これまでの努力がようやく実を結び、「全国で勝つ」という目標を初めて叶えることができた瞬間でした。あのときの喜びは、今も鮮明に覚えています。
中央大学への進学、そして新たな目標へ
高校の顧問の先生が中央大学の監督に信頼を寄せていたことや、高校の先輩方の背中を追い、中央大学の門を叩きました。 “今度こそ日本一位へ”という思いを胸に、新たな挑戦が始まりました。
大学1年生：苦しみの中で見つけた光
1年生では、初めてアジアジュニアの日本代表に選出されるも、実力を発揮できず悩み、その後も苦しい時間が続きました。そんな時、群馬県選手権に出場し、高校時代のような感覚で走れたことで、自分を取り戻すきっかけになりました。
大学での練習に加え「自分に足りないものは何か？今すべきことは何か？」と自問するようになったことが、大きな成長に繋がっていきました。
そして迎えた全日本インカレでは2位に入り、同級生のライバルたちに勝てたことは、大きな自信になりました。
2年生：成長、そして全国の頂点へ
2年生ではユニバーシアードに出場することを目標に掲げていました。
結果的に出場は叶いませんでしたが、学生個人選手権では、見事優勝。大学に入ってから初めて全国の舞台で頂点に立つことができ、本当に嬉しかったです。さらにその後行われた日本選手権では自己ベストを更新し、優勝。
1年前の日本選手権では予選落ちを経験し、スタンドから決勝を悔しい思いで見つめていました。“来年こそは、あの舞台で勝つ”と覚悟を決め、努力を重ねてきたからこそ掴めた結果でした。
3年生：プレッシャーとの戦い
2年生で好成績を残したことで、初めて「勝たなければいけない」というプレッシャーを感じるようになりました。「去年勝ったから、今年も勝たなきゃ」と、自分で自分の首を絞めていました。
関東インカレで2位に終わり、その後も勝てない日々が続きました。タイムは出るのに、勝てない。どんな試合でも勝つことを目指していた分、敗北は本当に悔しかったですが、負けたことで「もう、無理に自分を追い詰めなくていいんだ」と心が軽くなりました。
監督に「走りなさい」と言われても、「走りたくない！」と思ってしまうこともよくありましたが、そんな私を支えてくれたのがチームメイトでした。寮生活ではいつも誰かがそばにいてくれて、たくさんの人が声をかけ、気にかけてくれたことで前を向いて頑張ることができました。今でもとても感謝しています。
4年生：貴重な経験、最終学年としての意地
4年生では、日本のマイルリレープロジェクトに参加させて頂き、普段はライバルとして戦っている選手の方々と共に練習をしたり、海外の試合に出場したりと、貴重な経験を数多く積むことができました。横浜で行われた世界リレーにも出場し、日本代表として国際大会を経験できたことは、何ものにも代えがたい喜びでした。
最終学年では、全日本インカレの400mで優勝し、中央大学にタイトルをもたらすことができました。リレーでは惜しくも4位という結果でしたが、当時の中央大学記録を更新することができ、大きな達成感がありました。さらに続く日本選手権のリレーでも、全国の強豪を相手に3位入賞を果たすことができました。中央大学女子陸上部の温かい雰囲気、「チームのために」と思えた環境が、私の最大の原動力でした。
陸上から離れた時間
大学3年の冬、一度だけ競技から距離を置いたことがありました。特別な理由はなかったのですが、心が疲れていたのだと思います。
立ち止まったからこそ、「頑張りすぎていた自分」に気づくことができました。
その経験があったからこそ多くの方に、「感情に押し潰されそうなときこそ、自分の気持ちに正直になってほしいです。立ち止まっても、わがままになっても、その気持ちを受け止めてくれる人が、きっといます。だからこそ、まずは自分を大切に、そして陸上競技を好きでいて欲しいです。」と伝えたいです。
社会人として、再び夢の舞台へ
「社会人になっても陸上を続けたい」と思い始めた頃、中央大学の監督にお願いし、同じく中央大学OBであるスズキの監督さんをご紹介いただきました。
そして、”日本代表として世界の舞台で走りたい”という強い想いを伝えたところ、その気持ちを受け止めていただき、競技を続ける場として自動車メーカーのスズキに入社させていただくことになりました。
壁にぶつかった時間と、その先に見えた景色
1年目はコロナ禍の影響で練習も思うようにできず、孤独な時間が続きました。不安を抱えながら過ごす中、左足の疲労骨折もあり、出場できたのはわずか数試合。結果も残せず、悔しいシーズンとなりました。
2年目も怪我が完全には治らず、思うような練習ができない日々が続きました。迷いの中にいながらも、試合は待ってくれないので、「どう走りたいか」「どう準備すべきか」を自分なりに考え続けました。答えのない競技だからこそ、今の自分に合った方法を模索しながら、オンとオフを切り替えて前に進んできました。
3年目には、怪我との向き合い方が少しずつ分かるようになり、その上、体の使い方を学ぶ機会にも恵まれました。感覚任せだった練習が、技術的な裏づけをもとに変わり始め、理想の走りに近づいていく手応えを感じられるようになりました。
日本代表として、そして次なる高みへ
先輩方に追いつけず、苦しい時期が続いていましたが、昨年の出雲大会でやっと優勝し、ついに日本代表として走ることができました。
しかし、世界の舞台に立って感じたのは、「まだまだ世界とは差がある」という厳しい現実でした。その悔しさが、今の私の原動力になっています。昨シーズンは、シーズン初めに好記録を出せたものの、後半は目標を更新できずに苦しんだ時期もありました。「もうやめよう」と思ったこともありましたが、その頃に「陸上人生の区切り」を自分で決めたことで気持ちを整理でき、前を向くことができました。
最終目標を定めたことで、この冬季練習にも一層力が入りました。
今シーズンの目標
今シーズンの目標は、52秒台を出して日本選手権で再び優勝し、世界陸上のマイルリレーのメンバーに選ばれることです。そして、ここまで続けてこられたのは、支えてくれた多くの方々のおかげです。私の走りで、そんな皆さんに恩返しができるように。そして、誰かの力になれる存在になりたいと思っています。
そんな大きな目標を掲げる岩田さんを皆さんで応援しましょう！
